居住用賃貸をこなした実務修習生にとって同じ貸家及びその敷地であるオフィス用賃貸はそれほど難しいものでもなく、新たな論点は少ないのである。今回は居住用賃貸との違いに焦点を当ててポイントを解説することとしたい。
1.収益還元法の収入項目について
まず、居住用賃貸では礼金・更新料の授受という慣習が多くの地域であることは知っていると思うが、オフィスについては原則、礼金・更新料の授受はないが、全くないということではないので、周辺の募集事例を分析して地域毎に確認してほしい。それから、水道光熱費収入の計上もオフィス用賃貸では原則必要になってくる。オフィスではテナントごとに電力会社や水道局と契約することはなくオーナーがビル全体の電力、水道の契約するのが一般的であるからである。この場合、テナントが利用した電気料に応じて、オーナーがテナントに直接請求するものである。袖看板も原則、テナントから利用料をもらうことが一般的であるので、収入計上が必要である。
2.収益還元法の費用項目について
まず、水道光熱費収入を計上した場合には、同様に費用にも水道光熱費を計上する必要がある。水道光熱費用には水道光熱費収入には含まれない共用部のものも含まれるので、理論的には水道光熱費収入<水道光熱費費用になるはずであるが、実際には水道光熱費収入>水道光熱費費用となっている物件も多く存する。テナントに請求する水道光熱費の単価はビルのオーナーが自由に設定できるので、電力会社や水道局への支払い単価を上回るケースがあるからである。次に、原状回復費用について、オフィスビルの場合、退去時にはテナント負担にて原状回復工事が行われるため費用計上しないのが一般的であるが、これも例外があるので賃貸借契約書をよく読んで実態を把握すべきである。土地の税金について更地評価でやっているので理解できているとは思うが、住宅地と商業地では計算方法が異なるので、注意が必要である。
3.直接還元法で採用する賃料収入について
直接還元法で採用する賃料収入について、初年度のものを採用すべきか、最終年度のものを採用すべきか、平均を採用するのかと悩む修習生は多いと思う。正解はどれを採用しても利回りとの整合がとれていれば問題はないということである。DCFで将来の賃料が上昇すると想定している場合で、初年度の賃料を採用する場合には、還元利回りに賃料の上昇を見込むべきであるし、上昇後の賃料を採用する場合には、還元利回りには賃料の変動は見込むべきではないということである。実務的には上昇後の賃料を採用することが多いように思われる。