業務用ビルが終わると、居住用賃貸、オフィス用賃貸と貸家及びその敷地が続くわけではあるが、この類型は比較的論点が少なく全類型の中でも一番とっつきやすいと思われる。しかしながら、できる実務修習生とできない実務修習生との差が最もつきやすい類型である。というのも、世の中には証券化鑑定を専門にやっている鑑定士及びその補助者という者がいて、中には年間100件近い貸家及びその敷地の評価を行っている強者いるからである。とはいえ、そんなに難しい類型ではないので、ポイントをしっかりと抑えて、夏に行われる基本演習に自信を持って挑んでほしいと思う。
1.DCF法における将来変動予測(収入について)
居住用賃貸で一番頭を悩ませるのが、DCF法における将来の変動予測をどうするかということだと思う。2026年6月時点の東京や大阪など主要都市における居住用賃貸マーケットは、分譲マンション販売価格の高騰や都市部での人口増加などによって、賃料は上昇傾向が続いている。だからといって、これをもってDCFの賃料を将来にわたり上昇傾向で査定すると安直な判断をするのは危険である(そのような行為は鑑定士の能力を超えていると筆者は考える)。今現在賃料が上昇しているからといって来年も上昇するかどうかは誰にも分らないのである。実務的によく行われるのは、既存入居者の賃料が現在の新規賃料に比べて明らかに割安な場合に限り、その差を数年にわたり解消するように賃料を上昇させることである。数年にわたりと書いたのは、契約期間中に賃料を上げるのは現実的ではないので、契約更新や入居者の退去のタイミングでのみ賃料を上げることを想定しているからである。
ただ、実務修習の場合には実際のレントロールが入手できないので、指導鑑定士や実務修習生がレントロールを作成するようなケースも多いと思われるが、この場合には新規賃料との差がないので将来予測は原則として行わないことになる。これはこれで間違いではないのであるが、修了考査対策として賃料が上昇局面で、賃料の変動が0である理由を考えておく必要がある。なので、実際のレントロールが入手できない場合で自らレントロールを作成する際に、若干新規賃料よりも割安な賃料でレントロールを作成するというのも有用なテクニックの一つであると言える。
DCFの収入項目は、賃料のほか、駐車場、看板、自動販売機などがあるが、賃料以外の収入は横ばいと査定するのが一般的である。
2.DCF法における将来変動予測(費用について)
DCF法の費用項目について、例えば維持管理費、PM費などの管理項目について、最近では人件費の高騰が顕著であり実際に値上げをするケースも見られるが、管理会社と物件の所有者とではそのパワーバランスは圧倒的に後者が強いのであって、そう簡単に値上げができないのが実状である。一方、水道光熱費について、原油価格の高騰などがあれば、電力会社などは有無もいわせず値上げを実施してくるが、アメリカがいつイランを攻撃するかなどは誰にも予測ができるわけではなく、予測の限界を超えることであり、実務的には横ばいで想定することが多い。
修繕費(資本的支出も含む)や原状回復費用は建物の築年数が経過すると、それに応じて支出も増加していくものであるので、将来的に上昇傾向を査定しても間違いではないが、実務的には横ばいで査定することが多い。それは、これらの支出は年度によって多かったり少なかったり実際に右肩上がりできれいに上昇するものではないことから、平準化した費用を横ばいで計上するのである。
土地建物税金は3年に1度評価替えが行われることを知っている実務修習生は多いと思う。確かに建物については3年1度減価してくのであるが、土地は毎年税金が変化する(変化しない物件もある)というのを知らない実務修習生は多い。これは負担調整という制度によるものであるが(やや複雑なのでここでは詳細は省略する)、修了考査対策として土地の税金は毎年変わる可能性があることはぜひ押さえてほしい。
支出についての結論であるが、税金以外の支出項目は実務的には横ばいで想定することが多いということである(PM費が収入連動の場合にはこれも自動的に変動していく)。