株式会社東京アセットワークス

地代の評価における期待利回り査定ポイント~実務修習編~

2026.09.12

新規地代の評価で最も重要な作業といえば期待利回りの査定である。なぜなら賃貸事例比較法では類似の新規地代の事例を集めることは実質的に不可能に近いのであるから、積算法の精度が評価そのものを左右するのである。その積算法は、積算賃料 =基礎価格(通常は更地価格)×期待利回り+土地の公租公課であり、更地価格、公租公課の査定はそれほぼ難しいものではないので、期待利回りの査定≒新規地代の評価といっても過言ではない。期待利回りの査定を教科書的にいうと、類似事例との比較による方法と国債などのベースレートに不動産固有のリスク等を関する積上げ法を併用して求めることになる。

1.類似事例との比較による方法

    ここでも新規地代にかかる期待利回り事例を集めることは実質的に不可能であるから、類似事例といっても新規地代の事例ではなくて、継続地代の事例、底地の事例、土地建物の事例など類型が異なるものの事例水準と比較をせざるを得ないのが実態である。この点、期待利回りとして1~2%程度の低い利回りを採用している実務修習生をたまに見るが、よくよく見てみると、日税不動産鑑定士会が3年毎に発行している「継続地代の実態調べ」に記載された地代利回りを参照としている。これはいわゆる継続地代に係る利回りであって、分子の地代の多くは昭和の時代に契約されたものが改定されずに低位安定的に推移し、その分母は昨今の不動産過熱化において急激に上昇した地価を反映したもので、当然ながら新規地代利回りとは大きくかけ離れた低い利回り水準であることは言うまでもない。一方、相当地代を引き合いに出して期待利回りを6%としている実務修習生もいるが、相当地代とは通常は権利金を支払う取引上の慣行がある土地で、権利金を支払わない代わりに設定する税務上の地代で、不動産鑑定の新規地代とは別物である。昨今、主要都市で4%を上回る優良な投資用不動産はほとんどない中、建物の滅失リスクなどがなく、当面は安定的に推移するであろう新規地代の利回り水準が、4%を大きく超えるようなことは理論的には説明がつかないだろうと筆者は考える。

    2.国債などのベースレートに不動産固有のリスク等を関する積上げ法

    筆者は業界に入って約20年になるが、私の知る限りベースレートはほぼ変わっていない。この間、歴史的なゼロ金利時代を経験しているのにである。2026年9月1日に長期国債金利は30年ぶりに3%を超えたことが話題になったが、これを受けて不動産利回りのベースレートを3%とするのは時期尚早と言える。特に地代の利回りについては契約期間が長期にわたるものであるのだから、そのベースレートも相応の長期の平均を念頭に置いて考えるべきと考える。ちなみに、2026年の長期国債が3%だったと仮定して長期国債の5年平均を計算すると、たかだか1.2%程度、10年平均ともなると0.6%程度である。ベースレートの話はそのくらいにして、それに加算すべき不動産固有のリスクプレミアム等もそう簡単な話ではないのであるが、実務修習生にわかりやすくかみ砕いて説明すると、賃貸マンションなどの土地建物の利回りから建物に係るリスクを除くと概ね土地の利回りに近い数字になるくらいのイメージを思っていればとりあえず修了考査的には問題ないと考える。

    3.結論

    結局ベテラン鑑定士でも新規地代に係る期待利回りを求めるのは実際問題かなり難しい作業であると言わざるを得ないのが本音であるが、実務修習生として最低限知ってほしいことは、2%を大きく下回るような期待利回りは継続地代の利回りとの比較やベースレートの考え方とやや整合しないものであるのと、一般的には、建物の滅失・陳腐化等のリスクを負わない土地の期待利回りが、同一地域の土地建物の還元利回りを大きく上回ることは説明しにくい。あくまでも、弊社の実績ベースの話にはなるが、これまで弊社で評価してきた新規地代の期待利回りは概ね2.5~4%に収まっているものがほとんどである。いつも歯切れが悪くて大変申し訳ないのだが、実務修習生にとってはもうひと踏ん張り、体調にはくれぐれも気を付けて最後まで乗り切ってほしい。