株式会社東京アセットワークス

業務用ビルの評価におけるポイント~実務修習編~

2026.05.29

第2段階に入ると低層住宅、業務用ビル、居住用賃貸、オフィス用賃貸と建物及びの敷地の評価が続くわけではあるが、中でも業務用ビルは一番論点が多く難しいのである。その理由としては不動産鑑定理論そのものが業務用ビルの評価の最近のトレンドにやや追随しきれていない面があり、不動産鑑定理論をベースに脳内構造が形成されている実務修習生には理解が難しいのである。指導鑑定士の中にも経験が少ないと的確な指導ができていないケースも散見されるので、ぜひここで正しい評価方法をマスターしてほしい。

1.付帯費用(土地の付帯費用、土地建物の付帯費用)

土地の再調達原価は更地価格に土地の付帯費用を加える必要がある。具体的には建物の建築期間に必要な、土地の公租公課もしくは地代であるが、後述する土地建物の付帯費用に含めるという方法も実務的には許容されている。一方、土地建物の付帯費用について詳細は割愛するとして、実務的には土地建物の再調達原価の●%として把握され、5%~30%という数字を使うケースが多いと思われる。工事期間が短く完工リスクが低い倉庫・工場などは5~10%、業務用ビル、居住用賃貸、オフィス用賃貸では20%前後を使用することが多く、開発利潤、広告宣伝費等がかさむ分譲マンションが一番率としては高い水準となる。

2.収益還元法を適用する際の前提条件を十分に理解する

業務用ビル(自用の建物及びその敷地)で特に、実務修習生が混乱するのが収益還元法の適用の前提条件である。テナントが既に入居している状態を所与とするのか、一棟貸しなのか、リースバックなのか様々なケースが想定されるが、答えは「原状回復工事の完了していない空ビル」である。なので、収益還元法を適用する際には、テナントを埋めるまでの空室期間、リーシングコスト、賃貸に供するための工事費用(原状回復費用を含む)などを考慮する必要がある。実務上はリースバックを前提とする場合もあるがこれはレアなケースと考えられるので、評価の条件を設定する必要がある。たまに、一棟貸しを想定する実務修習生もいるが、これはこれで間違いではないので非認定にはならないが、そもそも1棟借りの需要がどれほどあるのか疑問であるし、賃貸面積をネットにするのがグロスにするのか、各費用負担をオーナーとテナントでどちらにするのかなど、論点が非常に多いので極力やめるべきである。

3.水道光熱費収入の考え方

結構な確率で、水道光熱費収入は共益費に含めるとしている実務修習生を見かける。おそらく、そのような契約形態が世の中に存在のであろう。しかし、私自身25年近く不動産業界にいるがそのような契約形態を見たことがないし、水道光熱費は使った分を実費精算するというのは一般家庭でも常識ではあるし、不動産業界でも同様である(賃貸マンションで水道料金を毎月定額で共益費とは別にオーナーに支払うというのは関西で見たことがある)。なので、水道光熱費収入は共益費に含めること自体は否定しないが、それが一般的ではないことは修了考査対策としてきちんと理解しておくべきである。

4.その他収入

実務修習では、賃料、共益費、水道光熱費、一時金、駐車場料金以外のその他収入は計上しないというのが一般的ではないかと思う。ただし、実務的には看板収入や自販機収入は計上することが一般的であるので、もし現地で撮った写真に袖看板や自動販売機が映りこんでいる場合には修了考査でつっこまれる可能性があるので注意が必要である。

5.費用の目安

業務用ビルに限らず、実務修習では契約書や見積書がないので、費用項目について想定することが多い。設備仕様や運営方針などにより大きくことなるものであるが、参考までに弊社独自の目安を紹介する。

■維持管理費 レジ:150~300円/月・賃貸㎡、オフィス:300~600円/月・賃貸㎡

■水道光熱費 レジ:30~45円/月・賃貸㎡、オフィスは収入=費用と想定

■原状回復費用 レジ: 30円/月・賃貸㎡~(築5年以内)、45円/月・賃貸㎡~(築5年~10年)、75/月・賃貸㎡~(築10~20年)、90円/月・賃貸㎡~(築20年~)

■修繕費(資本的支出含む) レジ・オフィス:建物最調達原価の0.3~1%(築10年以内)、1~1.5%(築10年~20年)、1.5%~(築20年~)

■PMフィー   レジ・オフィス:2~3%

■テナント募集費用 レジ:1カ月+広告宣伝費、オフィス:1カ月

■損害保険料 レジ・オフィス:建物再調達原価の0.05%~0.1%

6.試算価格の調整について

鑑定評価基準では自用の建物及びその敷地の鑑定評価額は、積算価格、比準価格及び収益価格を関連づけて決定するものとするとあるので、積算価格と収益価格の平均値をもって鑑定評価額とする実務修習生は多い。しかし、自用の建物及びその敷地であっても都市部では投資家が主な市場参加者となるケースが多いのでその場合には収益価格を重視して鑑定評価額を決定すべきである。なぜなら、投資家は積算価格を意識して投資判断をすることはほぼないからである。実務的にはこのような場合、収益価格=鑑定評価額とするケースが多いと思われるが、実務修習では積算価格にもある程度の重みを置いてたとしても非認定になることはないが修了考査対策として十分な理論武装は必要である。