「確定作業」はどの不動産を、どのような条件で評価するのかを机上で確定させる基本的な作業である。
確定作業では主に、Ⅰ.前提条件、Ⅱ.物的範囲、Ⅲ.権利関係の3点を整理・確定する。
不動産鑑定評価の前提条件は、鑑定士自らの判断で設定するものでなく、依頼者の依頼目的を十分に吟味するとともに、その条件が鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないかどうかの観点(必要に応じ、実現性、合法性に照らして妥当性を有するかという観点を含む。)から妥当なものでなければならない。実務修習においては、実務修習生自らの判断で行うべきではなく、模擬の依頼者である指導鑑定士に条件設定の有無を確認する必要がある。
1.対象確定条件
①独立鑑定評価
②部分鑑定評価
③併合・分割鑑定評価
④未竣工建物等の鑑定評価
※実務修習において、対象確定条件を設定するケースとしては、建物及びその敷地から構成さ
れ不動産について、その土地のみを建物等が存しない独立のもの(更地)として鑑定評価の対象
とする独立鑑定評価だけである。
2.地域要因または個別的要因についての想定上の条件
①用途地域が住居系から商業系へ変更されたものとして
②汚水処理施設等の嫌悪施設が移転したものとして
③土壌汚染が存する土地であるが汚染が除去されたものとして など
※地域要因または個別的要因についての想定上の条件を設定するケースは実務上も極めて稀であることを認識する必要がある。その条件が鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないかどうかの観点(必要に応じ、実現性、合法性に照らして妥当性を有するかという観点を含む。)からその妥当性を担保することが極めて困難だからである。当然、実務修習上も当該条件を設定することは控えるべきである。
3.調査範囲等条件
①土壌汚染の有無及びその状態
②建物に関する有害な物質の使用の有無及びその状態
③埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態
④隣接不動産との境界が不分明な部分が存する場合における対象不動産の範囲
※調査範囲等条件についてはブログ「不動産鑑定における条件設定~実務修習編~」詳しく紹介するため、本ブログでは省略する。
1.土地の筆数・地番・地積・形状
謄本、固定資産税・都市計画税課税明細、公図、地積測量図(法務局備付)、境界確定図、住宅地図、航空写真、設計図書等の照合により確定する
2.建物の用途、構造、階数、延床面積
謄本、固定資産税・都市計画税課税明細、建物図面(法務局備付)、設計図書等、確認済証、確認申請書、検査済証、航空写真等の照合により確定する
3.附属建物や工作物(塀、門扉、舗装、擁壁)の有無
附属建物は謄本や固定資産税・都市計画税課税明細より確認できるが、工作物については資料により確認が困難なケースが多いため、あらかじめ航空写真などであたりを付けて現地で現地にて詳細を確認する。
※実務修習では資料が限られるため、謄本、公図、地積測量図、建物図面といった法務局資料のほか、建築計画概要書、記載事項証明書などを役所調査で取得するほか、航空写真やgoogle Earthといったインターネット情報を駆使して、机上での物的確認を行うことが重要である。
1.土地
土地にあっては、所有権、地上権、区分地上権、地役権、賃借権(借地借家法上の借地権か旧借地法に基づく借地権か、また、普通借地権か定期借地権か)等を確定する。賃借権は登記義務がなく、謄本で確認できないケースが多いので、依頼者に確認の上、借地契約を受領する。
2.建物
建物等にあっては、所有権、賃借権(借地借家法上の借家権か廃止前の借家法(以下「旧借家法」という。)に基づく借家権か、また、普通借家権か定期借家権か)等を確認する。謄本では判別が難しいため、依頼者に確認の上、建物賃貸借契約を受領する。
※実務修習では、借地契約を想定するケースが多いと思われるが、地上権か賃借権か、契約期間、一時金の有無などの条件の詳細を模擬の依頼者である指導鑑定士に確認する必要がある。建物賃貸借契約についても同様であるが、倉庫など一棟貸しの場合には定期借家契約が一般的である一方で、共同住宅の個別契約は普通借家契約が一般的である点には留意が必要である。また、共同住宅で授受される更新料については、関東では授受が一般的である一方で、大阪など関西エリアの一部では授受の慣習がないなど、地域性がある点には十分留意が必要である。