株式会社東京アセットワークス

不動産鑑定における「条件設定」~実務修習編~

2025.12.12

不動産鑑定における「条件設定」~実務修習編~

現実の用途及び権利の態様並びに地域要因及び個別的要因を所与として不動産の価格を求めること等の対応のみでは多様な不動産取引の実態に即応することができず、社会的な需要に応ずることができない場合があることから、条件設定の必要性を認めたのである。その結果は、鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがあるということを肝に銘じて、利用者の利益を害するおそれがないかどうかの観点(必要に応じ、実現性、合法性に照らして妥当性を有するかという観点を含む。)から慎重に行うことが必要である。

実務修習においては、実務修習生自らの判断で行うべきではなく、模擬の依頼者である指導鑑定士に条件設定の有無を確認する必要がある。

 

1.対象確定条件

①独立鑑定評価

②部分鑑定評価

③併合・分割鑑定評価

④未竣工建物等の鑑定評価

※実務修習において、対象確定条件を設定するケースとしては、建物及びその敷地から構成された不動産について、その土地のみを建物等が存しない独立のもの(更地)として鑑定評価の対象とする独立鑑定評価だけである。なお、対象確定条件の設定にあたっては、利用者の利益を害するおそれがないかどうかの観点には留意する必要があるが、実現性と合法性の観点は問題にならないことは、修了考査重要論点である。

 

2.地域要因または個別的要因についての想定上の条件

①用途地域が住居系から商業系へ変更されたものとして

②汚水処理施設等の嫌悪施設が移転したものとして

③土壌汚染が存する土地であるが汚染が除去されたものとして など

※地域要因または個別的要因についての想定上の条件を設定するケースは実務上も極めて稀であることを認識する必要がある。その条件が鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないかどうかの観点(必要に応じ、実現性、合法性に照らして妥当性を有するかという観点を含む。)から、その妥当性を担保することが極めて困難だからである。当然、実務修習上も当該条件を設定することは控えるべきである。

 

3.調査範囲等条件

①土壌汚染の有無及びその状態

②建物に関する有害な物質の使用の有無及びその状態

③埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態

④隣接不動産との境界が不分明な部分が存する場合における対象不動産の範囲

※条件設定は極力行わないことは、利用者の利益を害する恐れがないかどうかの観点から重要であるが、工業地域における評価にあたっては調査範囲等条件を設定することは実務上でも多いと思われるし、実務修習においても設定することが望ましいと言える。ただし、以前は、土壌汚染の可能性が払しょくできないケースで積極的に条件設定を行うケースが見られたが、近年ではガソリンスタンド跡地に建てられた共同住宅の証券化評価のエンジニアリングレポートにおいて、相当程度の根切工事が実施され、現状で土地全体が建物及びアスファルトで被覆されているため、健康被害リスクは極めて低いとし、当該結果を受けて鑑定評価でも条件設定なしとするケースが見られるなど、価格形成要因としての影響度が低くなっている傾向がある。土壌汚染にかかわらず、アスベスト、PCB、埋蔵文化財包蔵地の評価においても同様である。しかし、実務修習においては、アスベスト、PCB、埋蔵文化財包蔵地に関して条件設定を行っている鑑定評価書が散見されるが、だいたいのケースにおいて専門家としての調査が不十分のまま、安易に条件設定をしているケースが多く、このような評価書は修了考査において面接官からの質問のターゲットになりやすい点は肝に銘じるべきである。