実務修習において低層住宅を評価する場合、原価法のみを適用するか、もしくはお飾り的に収益還元法を併用することが多いと思われる。いずれにしても、原価法の重要性が高いことは言うまでもなく、特に土地の比重が大きい都市部では土地の比準が鑑定評価の精度を大きく左右することになる。これまで一般実地演習は住宅地の更地評価から始まり底地まで5類型をこなしてきたことになるが、農地・林地を除いていずれも2手法を適用し両試算価格が概ね等しくなるように数字の調整を行えばよかったわけで、それほど市場分析を緻密に行わなくても何となく結論が出せたであろうと推測される。しかしながら、低層住宅では原価法で価格を決定するのであるが、その価格の妥当性を検証する相手方、すなわちもう一方の試算価格が存在しない、あるいは存在しても当てにならない収益価格が存在するのみで、鑑定評価額の信頼性を担保することが難しい類型と言える。実際、5類型は無難にこなせた実務修習生でも低層住宅になって突然とんでもない評価書を出してくる実務修習生を数多く見てきたが、それだけこの類型が実は難しい類型の一つであることを物語っている。このような低層住宅の評価において筆者が最も重要だと考えるのは、近隣地域の標準的画地の決定と、土地の比準における個別格差の査定である。以下、順を追って解説する。
1.標準的画地の決定
低層住宅の評価において重要な標準的画地の決定のうち、特に重要なのが標準的画地の規模を把握することである。他の類型では標準的画地の規模をアバウトに決めてもそれほど鑑定評価額に影響はないと筆者は考えるが、低層住宅ではそれが命取りになる。標準的画地の規模を決めるということは、すなわち昨今の「売れ筋」を把握することであるので、近隣地域の住宅地図を眺めているだけでは絶対に分からないケースが多い。「売れ筋」は時代とともに変化をするものなので、近隣地域の現状に騙されることなく、近隣地域を含むより広い地域において、最近どの程度の規模の土地がよく売れているのか売買事例を多数分析する必要がある(実務修習生は士協会のデータベースにアクセスできないので、募集事例や不動産情報ライブラリーの不動産価格情報にて確認する必要がある。大変ではあるが近隣地域及び周辺を実地調査することとも有用な調査方法である。)。昨今は地価や建築費が高騰しているので、敷地を細分化して1戸当たりの戸建住宅の値段を急激に上げないように業者側が企業努力をしていることがよく行われている。例えば、従来から150㎡程度の住宅が多い場所でも昨今はそれを半分にして(1戸当たり75㎡)土地の販売価格下げているケースも多く見られる。地価公示や地価調査のポイントを見て、近年地価の上昇傾向が継続しているような地域では標準的画地の規模は縮小している可能性が高いので、近隣地域の現状に惑わされることなく、標準的画地の決定を正確に行う必要がある。
2.個別格差の査定
実務修習では比較的ノーマルな戸建住宅を題材として選択すると思われるので、対象不動産と標準的画地の規模がほぼ同程度であるならばあまり問題にはならないが、標準的画地に比較して対象地の規模が大きいようなケースは注意が必要である。
①ケース1(標準的画地の規模が75㎡、対象地が100㎡の場合)
このくらいの規模格差があると標準単価に対して個別格差にマイナスの規模格差を考慮する必要がある場合が多い。市場分析で売れ筋の土地の価格帯(総額)が幅として把握されるはずなので、その価格帯から外れないように、逆算的に規模格差を把握していく必要がある。
②ケース2(標準的画地の規模が75㎡、対象地が150㎡の場合)
これくらいの格差があると「1.標準的画地の決定」で見た通り、対象地の需要者はエンドユーザーではなくて、対象地を区画割して分譲販売する開発業者になる可能性が高い。その場合、各区割りに必要な工事費用、測量費、登記費用、販売費、業者利益などが考慮されるので、その分標準単価に対して個別格差にマイナスの規模格差を考慮する必要があるが、ザックリ▲10前後付けても違和感はない気がする(潰れ地が発生する場合や分割後の敷地が不整形になる場合にはさらに大きな格差になる)。もし、建物を建てて戸建住宅として分譲販売することが地域の標準的な販売方法だと判断される場合には、建物の建築費で利益を確保することができるので、個別格差は上記より小さい数字になると 考えるべきである。