株式会社東京アセットワークス

不動産鑑定における「住宅地における地域概要の書き方」について~実務修習編~

2026.03.08

筆者は、鑑定評価書の作成過程において難しいことは何かと問われたら、間違いなく「地域概要の書き方」と答える。鑑定士になってしばらく、それも数年間、地域概要の書き方には相当苦しんだ。たかだか10行程度の文章に半日の時間を費やすということもざらにあった。これまで沢山の実務修習生を指導してきたが、「地域概要の書き方」を見れば、その実務修習生に鑑定評価書作成のセンスがあるかどうかわかる、というくらい力の差がでる箇所であるし、鑑定士として腕の見せ所でもある。ただし、半日費やしてどんなに素晴らしい文章を作成したからといって、実務修習で加点がもらえる訳ではないので、修習生には労せずしてプロらしい文章を作れるようにコツをぜひ習得してほしい。ポイントは点、まず①大きい視点→小さい視点と②エンドユーザーの視点である。①は、いきなり近隣地域のことを書くのではなく、対象不動産が存する広域的なエリアの性格→最寄駅→周辺地域→近隣地域とブレイクダウンしていくこと。②は、住宅地の評価であれば、自分が住宅を探すエンドユーザーになったと想定して重視する価格形成要因を考える。具体的には、交通利便性、生活利便性、居住環境の3点について言及して、最後に近隣地域の特徴と競争優位性を簡潔にまとめることである。言葉にすれば難しいが、以下に用意した2パターンのテンプレートのいずれかを利用する、もしくはそのミックスで相当数の案件に応用が可能と考える。

<住宅地としての住環境に優れるケース>

近隣地域は東京の都心部から南西方のいわゆる城南エリアと呼ばれる住宅地域として名声の高い地域に存している。最寄駅である●●駅は、ターミナル駅である●●駅から約20分と都心接近性に優れている。●●駅周辺には大規模商業施設、スーパーマーケット、金融機関、大手チェーンの飲食店舗、フィットネスクラブ等が見られるほか、近隣地域の周辺にはスーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、●●などの日用品店舗やクリニックなどの利便施設が立地している。このようなエリアにあって、近隣地域には中高層の共同住宅や戸建住宅が建ち並び、幹線道路背後に位置することから比較的閑静な居住環境を形成している。以上のように、各種利便性と居住環境を兼ね備えた近隣地域は、ファミリー層のみならず、単身者層からも旺盛な住宅需要を享受できる立地特性を有していると言える。

<住宅地としての住環境にやや難があるケース>

近隣地域は東京の都心部から東方のいわゆる城東エリアと呼ばれる下町風情と利便性が混在した住宅地域として人気の高い地域に存している。最寄駅である●●駅は、ターミナル駅である●●駅から約10分と都心接近性に優れている。近隣地域の至近には利便施設が少ないものの、●●駅周辺には大規模商業施設、スーパーマーケット、金融機関、大手チェーンの飲食店舗、フィットネスクラブ等が見られるなど生活利便性が高い立地条下にある。このようなエリアにあって、近隣地域は幹線道路沿いに事務所ビルや共同住宅などが混在する住商混在地域に存している。閑静な居住環境とは言い難いものの、各種利便性が高い近隣地域は、都心居住志向の強い若年層から一定の住宅需要を享受できる立地特性を有していると言える。