株式会社東京アセットワークス

不動産鑑定における「近隣地域の判定」~実務修習編~

2026.02.12

近隣地域の判定について、運用上の留意事項によれば「近隣地域の範囲の判定に当たっては、基本的な土地利用形態や土地利用上の利便性等に影響を及ぼす次に掲げるような事項に留意することが必要である。① 自然的状態に係るもの② 人文的状態に係るもの(ア 行政区域イ 公法上の規制等ウ 鉄道、公園等エ 道路)」と記載されている。筆者は約20年の鑑定経験があるが、留意事項に記載されているような内容の全てを毎回意識した記憶がない。というのも実務上の近隣地域は、自然的状態の変化や行政区域境に留意するほど広範囲に及ぶものではなく、大きくても半径数百m程度の範囲に収まることがほとんどだからである(対象不動産自体がゴルフ場のような大規模なものについてはこの限りではない)。

実務上は取引事例比較法において、各事例が存する地域と、対象不動産が存する地域の地域格差を比較するために設定するのが近隣地域であるので、取引事例比較法において考慮する地域格差が何かをまず把握するのが近道である。筆者の場合、取引事例比較法において考慮する地域格差は通常①道路幅員、②最寄駅への距離(工業地においてはインターチェンジも考慮する)、③周辺環境(居住環境、商業繁華性など)、④容積率であるので、これら④項目について同一性を有する範囲を近隣地域と設定する。ただし、②については同一にすることは難しいので、近隣地域の中心から対象地の距離はなるべく近くする(筆者は最寄駅への距離は80mごとに1ポイントの格差をつけるので、80m以内を意識している)。また、③については数値で表すことが難しいので、自分の感覚と、どうしても迷う場合には路線価が変わる部分を目安にすることもある。以下、いくつか近隣地域判定の例を挙げ、コメントをしていくこととする。

<Sample1>

近隣地域の範囲は、対象不動産が存する●●3丁目17番街区の範囲内で、特別区道●●号に接道する部分のうち対象不動産の南東端から30m、北東端から20mの範囲と判定した。

→減点される文章ではないが、下線部は要らないのではないか、あるいは「●●3丁目17番街区の範囲内で」を削除するか、もっとシンプルにしても伝わる文章が書ける。

<Sample2>

近隣地域の範囲は、対象不動産が存する●●1丁目13番街区の範囲と判定した。

→この文章だと標準的街路が不明瞭なので要らぬ詮索を受けやすい可能性があるため、接面道路について記載する方がベターと言える。

<Sample3>

近隣地域の範囲は、●●3丁目2番街区のうち、東側市道「●●線」に接面する範囲と判定した。

→シンプルで分かりやすい文章と言える。

<Sample4>

近隣地域の範囲は、対象不動産の北西端を中心として東に約20m、西に約25m、南に約30m、北に約20mの範囲と判定した。

→近隣地域を線ではなく面でとらえるよく見かける文章である。読んでいてわかりにくいのと、標準的街路が不明瞭な点はやや気になる文章である。

<Sample5>

近隣地域の範囲は、対象不動産が西側で接道する街路沿いで、対象不動産を中心に南北に概ね100mの範囲と判定した。

→シンプルで分かりやすい文章と言える。