株式会社東京アセットワークス

不動産鑑定における「最有効使用の判定」~実務修習編~

2026.02.11

「最有効使用」とは、不動産鑑定評価基準によれば、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用と定義されており、最有効使用の判定を簡単に言うと、「その不動産を一番価値が出るように使うとしたら何かを合理的に判断すること」である。住宅地域に存する共同住宅や商業地域に存するオフィスビルなどの場合には、現況利用を継続することが最有効使用と判定されるケースが多く、頭を悩ますことはあまりないと思われる。しかしながら、近隣地域の標準的使用と現況の建物の用途が異なる場合には判断に迷う実務修習生は多いと思われる。このようなケースにおいて、近隣地域の標準的使用=現況建物の用途としたいがために、標準的使用をあえて実際のものと異なる用途を記載する実務修習生は多いが、この行為は後々の修了考査を考えるととても危険な行為と言える。経験豊富な鑑定士であれば、近隣地域の写真を見れば、地域の標準的使用や対象地の最有効使用は容易に判断できるものであるので、実務修習生の小手先のごまかしは口述考査において絶好の口撃チャンスを与えることになる。近隣地域の標準的使用と現況建物の用途が異なる場合であっても、きちんと理論立てて文章を構成すれば面接官から過度な質問を受けることはないので、自信をもって近隣地域の標準的使用≠現況建物の用途の理由を説明してほしい。以下、参考までに例文を記載する。

■住宅地域に存する事務所ビルの場合

対象不動産は最寄駅から徒歩圏内の各種利便性に優れる住宅地域に存する事務所ビルである。現況用途は近隣地域の標準的使用である共同住宅とは異なるものの、近隣住民をターゲットにした来店型の店舗・事務所の需要は一定程度認められるエリアである。また、テナントの稼働率は長期安定的に推移しており、現行テナントの立退きに伴う多額の立退き費用や建物の物理的残存耐用年数を鑑みると経済合理性の観点から現行建物を継続利用することが妥当である。以上から、現況のまま継続使用することが最有効使用と判定した。

■商業地域に存する共同住宅の場合

対象不動産は各種利便性に恵まれた商業地域に存する共同住宅である。周辺には事務所ビルが多く建ち並んでいるものの、築古の事務所ビルが共同住宅に建て替わるケースも散見される。現況用途は近隣地域の標準的使用である事務所ビルとは異なるものの、都心居住志向が強い若年層から高い賃貸需要を享受できる立地条件下にある。また、昨今の建築費の高騰を考えると直ちに事務所ビルに建て替えることは経済合理性の観点から妥当性に欠けるものと考えられる。以上から、現況のまま継続使用することが最有効使用と判定した。