株式会社東京アセットワークス

商業地における建物想定~実務修習編~

2025.12.26

更地の評価の場合、収益性や投資採算性の認められる土地の場合には、取引事例比較法に加えて、収益還元法(土地残余法)や開発法を適用する必要がある。その場合には、土地の最有効使用と認められる用途の建物を想定することとなるが、低層一般住宅やアパートといった比較的シンプルな建物を除いて、不動産鑑定士自らが建物を想定することは実務上少ないと思われ、主に専門家である建築士の協力を仰ぐことが一般的と言える。

実務修習においては、実務修習機関によって対応は様々と言える。例えば、大手、準大手のように評価実績が多い機関では既にある想定建物図面を利用できるケースが多い。一方、大学でCADを用いて建物の想定行っているケースもあるが、実際はCADを用いずに実務修習生自ら手書きで想定を行っているケースも多く、この場合には情報や知識が限られる中、試行錯誤して苦労している実務修習生も多いと想定される。

1.題材選び

題材選びは商業地の評価に限らず重要であることは言うまでもないが、特に商業地の評価においては想定建物との関係で留意すべきポイントが多い。ただし、 商業地の評価の場合には評価対象地上に商業ビルが建ってるケースも許容されるため(大規模画地の場合にはこれが認められない)、当該建物を参考にして(というか当該建物を想定建物のベースとして)評価を行うと楽である。なお、商業ビルの場合には建物が大規模化するにつれて必要な設備が多くなっていくため設計上の難易度が上がるだけでなく、修了考査対策としても論点が多くなるので注意が必要である。

①延べ面積1500㎡の壁(東京都)

②周囲の建物に比べて目立って建物が低い

③建物の建築年数が古い

 ※実務修習の題材選びについて、まず考えたいのが①延べ1,500㎡の壁である。東京都は特定用途の面積が1,500㎡を超える建物に駐車場の附置義務があるので、なるべくなら附置義務のない建物としたい。②周囲の建物に比べて目立って建物が低い場合には、容積消化率が低い可能性が高いため、更地の評価の題材としては不適格と言える。③建物の建築年数が古い場合も既存不適格になっている可能性や建築計画概要書の取得が困難なケースがあるので極力採用を控えたい。

 

2.面積の定義

想定建物のベースが決まったら、建物の延べ面積から各階の面積、さらには賃貸面積へと全体の面積を細かくブレークダウンする必要がある。

①専有面積(テナントが排他的に利用できる部分の面積。賃貸面積とほぼ同義。)

②容積対象面積(専有面積、1階エントランス・管理諸室、各階廊下・トイレ・給湯室・PS・エレベータホール・内階段の合計)

③法延対象面積(容積対象面積、エレベータ、駐車場のうち5分の1相当の合計)←建築概要書記載の建物延べ面積

④施工面積(法延対象面積、外階段、バルコニーの合計)

※上記の各面積の定義を念頭に、法延面積から各階の専有面積を求めるのは理論的であるが、実務修習上は情報や知識が限られているから、そこまでやる必要はないと筆者は考える。1階から最上階までの形が同一の建物であれば、まず法延面積を階数で割って1階層当たりの床面積を査定すればよい(この場合1階から最上階までの各階床面積は全て同一となる)。そのうえで、各階の床面積にレンタブル比を乗じれば各階の専有面積が求められることになる。レンタブル比は2階から最上階までは同じ数値を使えばよく、一般的には中小規模の事務所ビルであれば80%前後と言われている。1階はエントランスや管理諸室があるのでレンタブル比は基準階のそれより小さくなるので例えば65%くらいの数値を使っておけば、修了考査対策としても十分である。なお、道路斜線制限の影響で上層階に行くほどセットバックしている建物の場合には、法延面積から各階の専有面積を求める際は注意が必要であるが、そもそもそのようなビルはできれば題材としての採用は避けたいところである。